Bグループ 飛行物

基本設計

BグループのCanSatはグライダーで飛行します。

今回のグライダーに求められる要件として、以下のようなものがあげられます。

・非操縦状態での飛行姿勢の安定性

・ローバーの重量(約500gを想定)を支えられる飛行能力

・ローバーを格納できるコンテナ

・CanSat規定サイズ(長さ240mm、直径146mmの円筒)に折りたためる

上の要件を満たすような機体形状を考案した結果、以下のようなものになりました。

・基本形状はエンテ型で、主翼は3段階折りたたみ式

・主翼下にコンテナを配置し、折り畳みはコンテナを包み込むように行う

※完成イメージ


エンテ型を採用したのは、一般的な形状ではコンテナを重心位置付近に配置しつつ折りたたみの機構を実装することが困難だったためです。また、飛行能力の目安の一つである翼面加重(翼が単位面積あたりに支える重量)が一般的な模型飛行機と同程度(35g/d㎡前後)になるためには、翼面積は20d㎡程度必要なため、主翼を3段階折りたたみ式にして翼面積を補いました。


当初は上記の通りに作成する予定でしたが、コロナの影響による工房利用や屋外実験の制限から、時間的猶予を考え、折り畳み機構の実装は見送る事にしました。

なお、予定として折り畳み機構は、強力な磁石と輪ゴムによって実現する予定でした。




紙飛行機模型

大まかな形状が決定した段階で、基本的な飛行特性(安定性や、適切な重心位置と翼の調整等)を探るためにまず紙飛行機の模型を作成しました。模型の作成にはモデリングソフト「metasequoia」と、ペーパークラフト作成ソフト「ペパクラデザイナー」を用いました。


公園で飛行テストした結果から、以下のような事がわかりました。

・主翼の翼断面はかなりしっかりキャンバーを付けたほうが安定して飛ぶ。

・先尾翼は逆キャンバーにして迎え角を強めにつける事で、ピッチ安定を得られる。

・先尾翼にかなりきつめの下反角にすると飛行姿勢を復元する力が働く。

・主翼は中央から程よい上反角を付ける事でロール安定性を得られる。

・先端の上反角は少し強くすることでヨー安定性を得られる。

・重心は主翼付け根の前縁から5.5mm(実機サイズに直すと22mm程度)で安定飛行した。


グライダー詳細

前述のとおり、当初の予定から展開機構を排除して作成する事にしました。

主な材料としては、カーボンとEPP(発砲ポリプロピレン)を用いて、強度の確保と軽量化を図りました。

胴体はカーボンパイプを用いて作成しました。

主翼は、8mm厚のEPPで骨組みを作り、カーボンスパー(細長い板状)とカーボンロッド(棒状)で補強しました。そこに3mm厚のEPPを張り、破れそうな箇所はグラステープを張って補強しました。

先尾翼は最初はEPPとカーボンで作成しましたが、実験中に紛失してしまい作り直すにはカーボンが足りなかったため、カーボンを竹串で代用して作り直しました。

また、特に主翼と先尾翼を作る時は、ゆがみが出ないように気を付けながら、紙飛行機でのテスト結果で得られたセッティングになるべく近づくように作成しました。

最終的にグライダーの重量は150g程度になりました。



コンテナ詳細

コンテナは、当初はニクロム線でテグスを焼き切って開けるという設計でした。しかし、ニクロム線の温度が足りないことが判明したため、サーボを用いて開閉する仕様に変更しました。

コンテナ本体は、8mm厚のEPPで側面を除く箱を作り、前面の丸い部分は3mmのEPPで、側面は3mmEPPと1mmバルサ材を組み合わせて作成しました。また、後述する開閉の仕組みの為に、左側上面と側面に穴をあけました。

コンテナを開閉する手順は、まずコンテナにローバーを入れ、コンテナ上部の穴からテグスを通し、ローバーのサーボによって閉じているフック部分に掛けます。側面の穴からも同様にテグスを通し、フック部分に掛けます。最後に、上部から出たテグスと側面から出たテグスをしっかりと引っ張ってから結びます。これにより、ローバーがサーボを使ってフックを開くと、テグスの引っ掛かりが外れ側面の壁が解放される、という仕組みです。


実験1

地上で機体を水平に投げてある程度調整した後、最初の実験を行いました。

実験の内容としては、水を入れたペットボトルをローバーに見立ててコンテナの中に固定し、高さ25.3mのダムの上から飛ばしました。結果として、機体の姿勢は安定していたものの全く前に進まずほぼ真下に落ちました。原因は重心が後ろすぎる事と、コンテナ形状がブレーキになっている事だと考えられます。この実験の結果から前進しない問題の解決策として、疑似的に重心を前にするために先尾翼を少し後ろにして、コンテナ後方を空気が流れやすい形状にしました。


実験2

2回目の実験では、実際のローバーをコンテナに入れて、同じく高さ25.3mのダムの上から飛ばしました。

結果として、以前よりは前に進むようになったものの、依然としてほぼ真下に落ちました。

下の動画はその実験の様子です。


また、Kinoveaを用いて、この動画について垂直方向の位置と速度の解析を実施しました。結果は以下のとおりです。

この結果から、グライダーは安定して落下している事を確認しました。

最大落下速度は約9m/sで、これは想定より速い結果と言えます。原因としては、うまく前進滑空せずほとんど落下になってしまった事で、十分な揚力を得られなかった事が上げられます。


前進しなかった原因を考察する為に、重りを乗せていない状態でも飛行実験を行いました。

下の動画はその実験の様子です。

この動画では、グライダーは下向きに半分宙返りしたあと、さかさまの状態で安定しているように見えます。このことから、グライダーの空力特性そのものに問題がある事がわかりました。考察としては、下部につけたコンテナの空気抵抗が、頭を下げる力を生んでいると考えられます。そのため、コンテナ形状を工夫する必要があると考えました。

Project17 めざせ宇宙開発 - 自律移動ロボット飛行プロジェクト

このサイトは、公立はこだて未来大学のプロジェクト学習としてCanSatに挑戦している人たちのサイトです。CanSatとは、人工衛星ミッションをコンパクトにしたシステムです。本プロジェクトではCanSat用の機体の開発とその道中で得られる様々な学びを目標としています。

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