Aグループ 構造系
はじめに
このブログでは、AグループのCanSatの構造系について詳しく記述します。最終的になぜこの形になったのか、それまでに至ったプロセスなどを順に解説します。
初期構想
まず初めに、今回のプロジェクト学習はコロナ禍の影響で対面で会議をする時間、試行錯誤しながら製作する時間、実際に大学で作業を行う時間などが大きく制限され、更には作業に入る段階までもが遅い中での取り組みになりました。
そのため、Aグループでは限られた中で従来のCanSatから大きく離れた形の構造に挑戦していくということはせず、シンプルにしっかりとミッションをこなせる構造にするという結論になりました。そこで、過去のCanSatの制作物をいくつか見る中で、王道であった二輪走行で進めていくこととなりました。
CanSatに与える機能
この段階では、まだ実際に材料やどのように製作していくかは考慮せず、どのような機能を設ければミッションの成功により近づきやすくなるのかを話し合いました。その中で、提案されたものの中でいくつかピックアップしたものをCanSatの構想図としました。それが、次の画像になります。
この構想図について解説します。
まずはじめに、タイヤについてです。タイヤは機体と地面との距離がある程度開いたほうが、小石や砂利などで引っかかることもなくなり走行性が上がるのではないかと考え、少し大きめのものをつけようと考えました。しかし、CanSatにはサイズの規定があり、Aグループが想定していた350mlサイズのルールではタイヤを大きくすることは困難です。そこで、タイヤを展開式にすることで打ち上げから、パラシュート展開、地面に着陸までの間でそのルールに反することなく走行性を上げられると考えました。
次に機体についてです。過去のCanSatの例をいくつか見てみると基盤が露出した状態で走行しているものが多く見られました。しかしAグループでは、耐久性や基盤をしっかりと守りたいという意見から、基盤を露出することはせず基盤全体を覆う箱状のものにしようという意見にまとまりました。ここで、出てくる問題が基盤のメンテナンスについてです。基盤を箱の中に固定しようとすると、何らかのエラーでCanSatが動かなくなった場合、原因を特定できず1から作り直しというようになりかねません。そこで、基盤をスライドしながら入れられるようにすればよいという提案があり、これはCanSatのサイズの関係上、基盤が二枚になってしまうという点とも都合がよいということもあり構想図で取り入れられました。
最後に左右の突起についてです。これは、二輪走行のCanSatが空中からの落下時や走行中に坂道などで真横に直立してしまうという状況を考えたときの対策です。先ほどで述べたようにタイヤを大きくするという構造にしたため、真横に直立してしまう確率も高くなります。そこで横に突起状のものをつけることで、そもそも直立するという状況が起こり得ないようにし、この問題を解決しました。
以上が構想図時点での、構造の特徴です。
モデリング
実際に設計を始めるにあたり、必要なサイズの情報があります。サイズと言っても様々で、モータやバッテリー、基盤の縦横高さなど設計をする上でとても重要です。しかし、基盤を制作で機器の検討に時間がかかり、実際に基盤と合わせたときの高さなどが出ない状況が続きました。そのため、設計を始めるのが遅めとなりました。
Aグループでは、ADS樹脂を素材に3Dプリンターで作成すると決めました。3Dプリンターで物を印刷するためのデータを作成するために、3DCADソフトであるFusion360を使用しました。そのはじめの、設計データが次の画像です。
まず、構想図と大きく異なる点は機体が横長ではなく縦長になったことです。なぜ縦長になったかの経緯を説明します。二輪で走行するためにはもう一点地面と接触している部分が必要です。それがないと、何らかのセンサで地面と機体とを並行に保たない限りタイヤが空回りする、あるいは機体がぐるぐる回ってしまうという現象が起きます。しかし、それに挑戦するには、あまりに時間が足りないと考えたためタイヤ以外のもう一点を地面に接触させることを選びました。その上でもう一つの地面との接触部分をADS樹脂だけで作成してしまうと軽すぎるため、機体を支える点として十分な働きができないと考えました。しかし、ADS樹脂以外におもりを乗せようとするとCanSat全体としての重量が上がってしまい、ルールの規定内に収まらないという問題が発生するためこの案も適当とは言えませんでした。そこで、機体を縦長にすることで重心をタイヤより後方にずらし機体の尾を地面との接触点として機能するようにしました。しかしこれにも衝撃の問題が発生します。それを解決するために、ホームページの方で述べた衝撃対策を施しました。
次にアルファベットに沿って解説していきます。
A. ここはモータを入れる部分になりタイヤと機体との距離を少し離すため、突出した形状になっています。タイヤと機体を離す理由は、ホイール部分をねじで止めるため、そのネジが機体と擦れてしまうことを避けるためです。
B. ここは、バッテリーを収納する場所です。この段階では、バッテリー一つでCanSatを動かす予定だったのでモータの設置に当たり空いた隙間をバッテリーサイズに調整しました。
C. バッテリー部屋とDの部屋を仕切るセパレータの役割を持つ壁です。また、ただの壁だけだと各種接続ができないため、線を通す穴を開けています。
D. 基盤を収納する部屋です。上下2つに分かれており、二枚の基盤を収納します。また、構造図の段階であったスライド式の収納方式をここで取り入れています。
E. 外部と通信を行うためのアンテナを出すための穴です。
F. 各パーツを接続するためのジョイント部分です。
以上が初号機のデータの解説です。
初号機製作
3Dモデルを時間はかかったものの実際に印刷しました。しかし、様々な問題がありました。まず、ジョイント部分です。データではピッタリのサイズで作成したのですが、積層型の3Dプリンターであったこともあり穴のサイズがデータよりも縮んでしまいました。そのため、凸の方のパーツを紙やすりで削りぴったりになるように調整しましたが、一つの凸パーツが折れてしまいました。さらにこの段階で、基盤の高さが足りなくなり二枚構造のところを薄く重ねて一部屋で管理することになりました。その結果、先述のD部分の上下を仕切る壁を取り除き一部屋にしました。更にここで問題が発生し、積層型の3Dプリンターはモデルの中身が詰まっているわけではないので、切り口が壁にならずパラパラと中身が出てしまうという問題が発生しました。さらには、バッテリーがこの段階で2つ必要であると要請があり、2つ目のバッテリーを乗せるスペースはありませんでした。これらの問題が重なり初号機という名前の通り、この機体は没となりました。
モデリング2
初号機で発生した問題や追加項目なども踏まえて再度データの作成を行いました。このデータは最終製作物のデータであるので、各部分の解説についてはホームページの構造説明と同じです。
前回と比べての改善点としては、まずジョイント部分を凸と穴にするのではなく、壁の半分のサイズの板を上下に合わせる形にしました。このようにすることで、印刷後の紙やすりでの調整がしやすくなります。加えてジョイントの両方の状況がわかるのでネジ止めが容易になります。
次に「モデリング」でのC部分です。バッテリーを壁際に埋め込む形となり、さらには基盤が一枚構成になったため、セパレータの必要がなくなり削除しました。これにより、中心部での接合部分がなくなり、落下時にパーツ同士が外れてしまうという危険性もなくなりました。また、サイズ自体も縦に5mm短くなりました。
2号機製作
2号機はパーツがほとんど別れていないため、一回の印刷に9時間がかかりました。さらに、モータ・バッテリー部分が浮いているため、積層型3Dプリンターの支柱も多く作られてしまったため、その跡を取り除き消すという作業も行いました。こうして、Aグループの機体が完成しました。構造の各種機能はホームページを御覧ください。
タイヤについて
ここまで飛ばして記述していましたが、構造の製作と並行してタイヤの製作も行いました。タイヤは高層図の段階では、展開式にするという予定でしたが、展開するための信号を送るためにタイヤ部分に電線を伸ばさなくてはいけないことや、金属パーツを扱うことになるため、正確に加工ができないことなどからこの案は没になりました。タイヤの機能についてはホームページを御覧ください。
ホイール部分はillustraterを用いてデータを作成し、レーザーカッターで加工を行いました。
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